学校現場で保護者と向き合う中で、よく耳にするのが「子どものため」という言葉です。
一見すると、教育に対する熱意や愛情が込められているように聞こえます。
しかし、実際にはその「子どものため」という言葉が、子どもを守るどころか、時には成長を妨げる結果につながることもあるのです。
例えば、授業での指導や学校のルールに対して、「うちの子が傷ついている」「このやり方は子どものためにならない」といった意見をいただくことがあります。
その一方で、親の意見を受け入れて指導を変えた結果、クラス全体のバランスが崩れたり、他の子どもたちに影響が出るケースも少なくありません。
また、保護者の中には、「子どものため」という名目で学校に過剰な要求をすることもあります。
「自分の子だけが目立つ役をもらうべき」「もっと特別な指導をしてほしい」といった主張がそれです。
こうした要求が、他の子どもたちやクラス全体の環境にどのような影響を与えるのかを考える余裕がない場合もあります。
保護者としては、もちろん子どもが大切で、誰よりも守りたい存在であるのは理解できます。
しかし、教師の立場から見ると、「子どものため」と言いながら実際には親自身の不安や期待が投影されていることが多いと感じる場面があります。
親が「自分の子どもに特別な配慮を」と思うあまり、学校や教師との対立を生むことが少なくないのです。
本当に「子どものため」になるのは何か。
それは、子どもが自分で問題を解決する力を身につけたり、困難に立ち向かう経験を積んだりすることではないでしょうか。
親や教師が先回りして守りすぎることで、子どもたちが失敗から学ぶチャンスを奪ってしまっているとしたら、それは「子どものため」ではなく、「子どもの成長を妨げている」ことになるかもしれません。
学校と家庭は、子どもたちの成長を支えるパートナーです。
保護者と教師が互いに歩み寄り、「子どものため」に何ができるのかを共に考えることが大切です。
そのためには、学校が保護者の意見を尊重しつつ、教育現場の現実をしっかりと伝え、共有することが必要です。
一方で、保護者も自分の期待だけではなく、子ども自身の成長を優先して考える視点を持っていただければと思います。
「子どものため」という言葉は、教育の現場ではとても重い意味を持っています。
それが本当に子どもたちの未来を支えるものになれるように、私たち大人ができることをこれからも模索し続けたいと考えています。
コメント