先日、小学6年生の男子の両親が放課後に来校しました。
話を聞いてみると、「嫌いな子と違う中学に進学できるよう、学区域を忖度してほしい」という相談でした。
この時期になると毎年のように似たような相談を受けますが、正直言って、対応に頭を悩ませます。
もちろん、親としては子どもが安心して学校生活を送れるようにと願う気持ちは理解できます。
特に、嫌いな子どもやトラブルのあった相手と同じ環境で過ごさなければならないとなると、不安や心配が募るのも無理はありません。
しかし、学校の学区域は簡単に変更できるものではありませんし、そもそもそのような対応をしたとしても、問題の本質が解決するわけではないのです。
特定の子どもを避けて進学したとしても、どこの学校でも新たな人間関係が生まれます。
新たなクラスメイトや教師との相性、新しい環境でのトラブルなど、避けて通れない問題が必ず待っています。
過去の嫌な経験から逃れるためだけに環境を変えたとしても、同じような悩みを抱える可能性はゼロではありません。
それどころか、慣れない環境でのストレスが原因で、状況が悪化するケースも少なくないのです。
また、こうした相談を受けるたびに感じるのは、家庭の影響力の大きさです。
子どもが他人を「嫌い」と強く感じる背景には、親の価値観や態度が反映されていることが多いと感じます。
親自身が過剰に子どもの敵意を後押ししてしまうと、子どもはその感情に囚われてしまい、人間関係をうまく築けなくなることがあります。
むしろ、親が「嫌いな相手ともうまくやる力を身につける」ことを教えようとする姿勢があれば、子どもはより柔軟に人間関係を築けるようになるのではないでしょうか。
教師として、こうした相談に対してできるのは、子どもたちが環境の変化に適応し、新しい人間関係を築けるようサポートすることです。
一方で、親に対しても、学校にすべてを委ねるのではなく、家庭でできるサポートについて考えてもらえるよう働きかけることが必要です。
進学や環境の変化は、子どもたちにとって大きな挑戦であり、成長のチャンスでもあります。
嫌な経験や困難に直面したときこそ、それを乗り越える力を養う大切な機会だと信じています。
だからこそ、学校も家庭も、それぞれの立場から子どもを支え、成長の手助けをする姿勢を忘れずにいたいと考えています。
コメント